2013年9月17日火曜日

合格ラインは都道府県ごとに違うかもしれない!

更新:平成27年1月2日


平成25年12月4日になると、今年の合格ラインが公表されます。
その際、例えば、「合格判定基準は50問中34問以上正解[登録講習修了者(5問免除者)は45問中29問以上正解]だった」というように発表されます。

宅建試験の合格ラインが公表されるようになったのは、こちらの記事でも書いたように2002年(平成14年)以降ですが、私はそれ以前の2000年(平成12年)、2001年(平成13年)と、ホームページ上で、合格ラインは「都道府県ごとに違うかもしれない!」と書きました。

このホームページ上の記載については、当時大反論されましたが、合格ラインは「都道府県ごとに違うかもしれない!」という感触は、現在でも相変わらず持ち続けています。

(1)反論者の根拠・主張


合格ラインは「都道府県ごとに違うかもしれない!」という私の主張に対する反論の根拠で、私を納得させるものには、いまだ、出会ったことがないです。

都道府県ごとに合格ラインが違うのなら、「試験実施機関がそれを公表したはずだ!」というのが、唯一の根拠らきものでした。

それ以外は、ただ感情オンリーで、反論の根拠には全然なっていませんでした。
「迷物講師の売名行為だ!」とか「小口は狂ってる!」というような主張ばかりでした。

(2)「試験実施機関がそれを公表したはずだ!」という根拠らしきもの


都道府県ごとに合格ラインが違うのなら、「試験実施機関がそれを公表したはずだ!」という反論ですが、そういう反論は、いまだに、私の主張を崩す根拠にはなっていません。

これは、最近話題になっている原発事故の処理問題に置き換えてみると分かりやすいでしょう。

東京電力は、タンクからの高濃度(放射能)汚染水漏れを長い間隠していました。
それに対して、高濃度汚染水が漏れていたのなら、「東京電力がそれを公表したはずだ!」と今さら主張しても、誰がそれを信用できるのでしょうか?

「試験実施機関がそれを公表したはずだ!」という反論は、原発事故さえ予想だにしなかった2000年(平成12年)、2001年(平成13年)当時の私にも、現在の私にも、「東京電力がそれを公表したはずだ!」と同じにしか聞こえないのです。

せいぜい、こういう御意見を述べるかたの、人の良さ・育ちの良さを感じる程度ですね。

(3)私の根拠


「合格ラインは都道府県ごとに違うかもしれない!」と主張する私の根拠は、次の通りです。

(イ)法的根拠 - その1

宅建試験を「行う(主催する)」のは知事の義務です(宅地建物取引業法第16条1項)。

試験実施機関(RETIO)には、宅建試験を「行う(主催する)」義務なんかないです。
このことは、RETIOのホームページにも下のように記載されています。

宅地建物取引主任者資格試験は、都道府県知事が、国土交通省令の定めるところにより行うこととされています。昭和63年度から、国土交通大臣が指定した指定試験機関(一般財団法人不動産適正取引推進機構)が、すべての都道府県知事の委任を受けて実施しています」。このように記載されているのは、宅建試験を「行う(主催する)」のは知事だという意味でもあります。
こちらがそのホームページ

つまりRETIOは、すべての都道府県知事の委任を受けたに過ぎない、下請けみたいなものなのです(こういうRETIOを、民法上は準委任契約における事務の受託者といいます。民法656条参照。)。

そして、こちらでも書いたように、合格ラインは宅建試験を「行う(主催する)」知事が決める政策であり、この政策は秘密事項です。

だから、宅建試験の実施について、すべての都道府県知事から受託されたRETIOは、すべての都道府県知事と秘密を漏らさない特約を結びそれを守る必要があり、前述の、都道府県ごとに合格ラインが違うのなら、「試験実施機関がそれを公表したはずだ!」という反論には、法的根拠が何ら無いことになるのです。


(ロ)法的根拠 - その2

RETIOのホームページにも書いてあるように、RETIOは「すべての都道府県知事の委任を受けて」宅建試験を実施しています。

これは民法的には、都道府県のすべての知事と、準委任契約における事務の受託契約を締結しているということです。

北海道知事と契約し、次は青森県知事と、その次は秋田県知事…という具合に、沖縄県知事に至るまで、47本の契約をしているということです。

私がここから感じ取る法的な臭いは、各県知事の権限は法的に独立しているな! ということです。

つまり合格ラインを決定する上で、どこかの知事が、他の都道府県の知事の影響を受けることは無い! ということです。

もっと具体的に表現すれば、例えば、高知県の政策として「高知県では宅建主任者が足りなくて困る」ということになれば、合格判定会議で「高知県受験者の合格最低点を1点下げて欲しい!」と要求できるのではないかと…。

(ハ)法的根拠 - その3


前述したように、「合格判定基準は50問中34問以上正解[登録講習修了者(5問免除者)は45問中29問以上正解]だった」というように合格ラインが公表されますが、この際の合格判定基準という曖昧な言葉が、「合格ラインは都道府県ごとに違うかもしれない!」と私が主張する法的根拠になり得ると考えています。

何とか「基準」という言葉は、法律上はどうにでも解釈できる便利な言葉なのです。
建築基準法の「基準」とか、合格判定基準の「基準」などは、その代表例でしょう。

とすると、「合格判定基準は50問中34問以上正解だった」と全国の受験者にホームページ等で発表しても、それをもって直ちに「全国の合格ラインは34点だった」などと信じてしまうのは、あまりにも「基準」という言葉の曖昧さ・便利さを知らない者の解釈なのではないか、と感じてしまうのです。

「合格判定基準は50問中34問以上正解だった」という場合、それは受験者が一番多い東京都の合格点が34問だったことを表わすに過ぎず、宅建主任者が足りなくて困っている高知県の合格点を33点にしても、何とか「基準」という言葉の使い方に、法律上の誤りはないです。

(二)RETIO資料の分析結果

試験実施機関のRETIOに提出して頂いた資料を元に、宅建倶楽部では宅建の合格率
というページを公開しています。

昔からミヤコの教育・文化の高さを象徴する言葉に、「田舎の学問より京の昼寝!」というのがあります。

何でもが東京に一極集中している現代では、「田舎の学問より東京の昼寝!」となるのでしょうが、宅建の合格率は、大体の年において東京都が一番です(地方のかたにはスイマセン)。

例えば、2011年(平成23年)の合格率は、
 ・ 全国平均…16.1パーセント
 ・ 東京都……17.9パーセント
 ・ 高知県……15.5パーセント
です。

でも東京都が一番になれない年があります。
去年の2012年(平成24年)の合格率は、
 ・ 全国平均…16.7パーセント
 ・ 東京都……18.4パーセント
 ・ 高知県……18.5パーセント
で、高知県が一番でした。

2000年(平成12年)も東京都が一番になれませんでした。
 ・ 全国平均…15.4パーセント
 ・ 東京都……17.2パーセント
 ・ 高知県……17.8パーセント
で、高知県が一番でした。

2001年(平成13年)も東京都が一番になれませんでした。
 ・ 全国平均…15.3パーセント
 ・ 東京都……16.6パーセント
 ・ 高知県……17.6パーセント
で、高知県が一番でした。

2002年(平成14年)も東京都が一番になれず、
 ・ 全国平均…17.3パーセント
 ・ 東京都……18.9パーセント
 ・ 鳥取県……19.2パーセント
で、今度は鳥取県が一番でした。

このように、「田舎の学問より東京の昼寝!」が当てはまらないで、地方のほうが数字の良い、不思議な年もあるのです。

かといって、高知県や鳥取県が全国一番だった時に、隣の徳島県や島根県はどうだったか? と調べてみると、徳島や島根は「田舎の学問より東京の昼寝!」が見事当てはまってしまい、合格率が全国平均より相当低かったりします。

こうなると、その原因は地域性とは言えず、私には、何らかの人為的操作がなされたとしか思えません。
そして細かく見ていくと、高知・鳥取的な不思議さは他県にもあるのです。

※ 参考

【宅建士】都道府県別合格率は?合格率が最高の都道府県と最低の都道府県

(4)私は反対しているわけじゃない


「合格ラインは都道府県ごとに違うかもしれない!」という私の考えが真実だとしても、私はそれに異議を唱えるつもりは毛頭無いです。

法理論的に見て、合格判定会議で「高知県受験者の合格最低点を1点下げて欲しい!」との高知県知事の要求は、まさに「地方分権」の意図する地方の特殊性からのものであり、日本国憲法が要求する法の下の平等に反するとは、とうてい言えないからです。


2013年9月13日金曜日

試験実施機関は合格ラインを操作出来ない

(1)試験実施機関が合格ラインを操作出来るという誤解


試験実施機関の「不動産適正取引推進機構(RETIO)」が合格ラインを操作出来る、という誤解が拡散しています。

しかし、法理論的に、試験実施機関は合格ラインを操作することなど絶対に出来ません。

試験実施機関が合格ラインを操作出来るという考えは、大きな誤解です。

(2)試験実施機関が合格ラインを操作出来ない理由


こちらの記事でも書きましたが、世の中の催し事は、すべて主催者によって決められます。宅建試験の主催者(宅建試験を「行う」者)は都道府県知事であり、試験実施機関(RETIO)は主催者ではないからですね。

(3)なぜ誤解が拡散しているのか


じゃなぜ、「試験実施機関が合格ラインを操作出来る」なんていう誤解が、拡散しているのでしょうか?

このような誤解を拡散させると儲かる者がいるからです。

(4)誤解を拡散させると「誰が」儲かるのか


私がネットを始めた1998年(平成10年)頃は、業界紙・出版社・大手予備校が誤解の拡散によって儲けていました。

最近は、独立系宅建講師やアフィリエイターが、それに加わって来ました。

(5)誤解を拡散させると「なぜ」儲かるのか


 ・ 業界紙
 ・ 出版社
 ・ 大手予備校
 ・ 独立系宅建講師
 ・ アフィリエイター
の誰一人として、合格ラインの正式発表まで、「本物の合格ラインを知ることができない」です。誰も正解を知ることができない期間は、何を書いても飯の種になるチャンスがあるのです。

合格ラインは政策(一次的には都道府県の政策、最終的には国家の政策)によって決まるのであり、そういう政策は機密事項であり、事前に漏れることは無いから、何を書いても飯の種になり得るのです。なお、合格ラインが政策で決まるという点は、こちらの記事に書きました

(6)誤解を拡散させる「手段」は?


何しろ、業界紙~アフィリエイターまで、「飯の種である本物の合格ラインを知ることができない」ので、いろいろと悪知恵が発明されています。
今回は二つの悪知恵をご紹介します。

(イ)悪知恵 - その1

悪知恵の一番目は、「業界紙・出版社・大手予備校」は天下り役人等を介してお上等とつながっているので、本物の合格ラインを「リークしてもらえる」というものです。いわゆる「リーク型」。

私の長い講師経験の中で思い起こすと、確かに、そのような時期もありました。

例えば、2001年(平成13年)には、業界紙が、「今年の合格ラインを決める"宅地建物取引業法主管者協議会"(合格ラインを決める会議)が熊本市で開かれ、合格ラインが34点になった模様」というような記事を、正式発表前の11月中旬に堂々と掲載していました。

この記事は現在ネット上で拾うことは出来ません。業界紙が削除したと思われます(宅建倶楽部が保管している当時の新聞紙に基づいて書いてます)。

2000年(平成12年)・1999年(平成11年)…と10年以上さかのぼっても、11月中旬には同じような業界紙の記事が掲載されていたものです。

しかし、状況が一変したのは、2002年(平成14年)以降です。
規制改革会議の提言によって、合格ラインが正式発表されるようになった最初の年が2002年(平成14年)です。規制改革担当大臣が石原伸晃氏の時です。

そして、合格ラインが正式発表されるようになってから、業界紙・出版社・大手予備校が、本物の合格ラインを「リークしてもらえる」という時代は去り、宅建試験がだいぶ透明化して来ました。

でもいまだに、この古典的手法が使われることがあるのは、残念です。
去年(2012年・平成24年)も数例発見しました。
発信元は、独立系宅建講師やアフィリエイターでした。

私の感覚では、無知な受験者に対しては、まだ効果があるようです。

(ロ)悪知恵 - その2

業界紙~アフィリエイターまで、「飯の種である本物の合格ラインを知ることができない」ことから派生する二番目の悪知恵は、いわゆる「競馬予想型」です。

つまり、
 ・ ▲▲予備校は去年も当てているので、今年の予想も信用できる
 ・ @@予備校は大手の中でも過去の的中率が一番なので、今年の予想も信用できる
 ・ ◆◆予備校は最新の統計アルゴリズムを取り入れたコンピュータ予想なので、信用できる
的なものです。

この二番目の悪知恵、ネットリテラシーの高い受験者ほど、引っ掛かりやすいというのが、私の診たてです。

それだけに、同じくらいネットリテラシーの高い、変なアフィリエイターが好んで使っている悪知恵です。


「明日の天気の予想は?」と問われた場合、「今日と同じだ!」と答えておけば、我が国では6~7割が当たります。気象関係者の間では有名なエピソードです。残りの3~4割を当てるためにスーパーコンピュータを導入しても、「経験したことがない異常気象でした!」で逃げられるのが予報(予想)の世界なのは、皆さまご存知の通りかと…。

(7)最後に


私個人としては、「悪知恵その1」も「悪知恵その2」も、祭り気分で、軽く受け流せる性格(受験者だったとしても気楽に2CHができる性格)なのですが、宅建受験者の過半数(10万人以上)は、そうじゃないと思います。

ネットが発達してきたとはいえ、また、ネットリテラシーが高いとはいえ、ヤフーやグーグルの検索でヒットしやすいアフィリエイターが発信した情報に一喜一憂する受験者は、過半数は下らないと感じてます。

受験者の性格に由来するとしても、今年も、10月20日の本試験以降正式発表の12月4日まで,変なブロガー等にもてあそばれて「針のむしろ状態になる」受験者を一人でも減らすのが、私の正義感です。

かと言って、私の正義感が普遍性を持っているなどと威張るつもりはありません。
わが国が資本主義陣営に属する以上、アフィリエイターにも営業の自由があるのは当然です。

されば、私の正義感と営業の自由をバランスさせる点は、奈辺(なへん=どの辺り)に有りや!

そんなこと思いながら、今日は夕食後にこんな記事を書いてみました。

2013年9月11日水曜日

合格ラインを決める「政策」とは

宅建の合格ライン(合格判定基準)は"政策"で決まるのですが、この"政策"とはどのようなものか? について書きます。

(1)宅建試験を行うのは知事 


受験者の皆さまが願書を提出した先は、試験実施の「協力機関」です。
私が住んでいる千葉でいえば"千葉県まちづくり公社"が協力機関になります。

各都道府県の協力機関は、皆さまが提出した願書を試験実施機関に集約させます。
その「試験実施機関」が"不動産適正取引推進機構"という所です。RETIOとも言われます。

でも、宅建試験を行うのはRETIOじゃないです。
RETIOは、都道府県知事から宅建試験の実施を委託されたに過ぎない「試験実施機関」です。

宅建試験を「行う」のは、あくまでも知事なので注意して下さい。

このことは、宅地建物取引業法第16条1項に、宅建試験を「行う」のは知事の義務であることが、ちゃんと書いてあります。
宅地建物取引業法第16条1項の原文

ここを間違えると、合格ラインを決める政策がどのようなものか? について、最初から変な方向に向かってしまうことになります。

(2)合格ラインは知事が決める政策


宅建試験を「行う」(主催する)のは、あくまでも知事です。
だから、合格ラインは知事が決める政策なのです。

こんなこと、法律を全然知らない人にとっても当然の話ですよね。
お祭りでも何でも同じです。
いろいろな事を決めるのは主催者(宅建で言えば宅建試験を「行う」知事)に決まってますもんね!

3)合格ラインを決める政策は、ややこしい


我が国には47もの都道府県があるので、知事も47人います。
その47人が会議を開いて、「今年の合格ラインは33点にしよう! いや34点がイイ!」なんて揉めるので、合格ラインを決める政策は、ややこしい事になることもあります。

見てきたような事書いてますが、宅建合格ラインの決定だって"お上"の政策です。
お上には法律上の守秘義務があるので、この政策が公開されることはないです。

そこで迷物講師が書くことは、法律・命令・規則等で公開されているものを除いて、長年の経験に基づく"推測"が入ることをお許し下さい。

(4)知事は、自分では会議に出席しない


我々が報道等で知るように、例えば東京都の猪瀬知事のスケジュールは超多忙です。知事職はどこの都道府県でも、相当お忙しいです。
そこで、宅建試験の合格判定会議に知事が直接出席した事例は、昭和63年以降一度もないはずです。

じゃ誰が出席するかと言えば、各都道府県の担当部署のかたです。
各都道府県2人ずつの担当部署のかたが、出席するらしいです。

したがって、その会議体は2×47都道府県=94人で構成されますが、その他に、国土交通省の役人等も出席するらしいです。

そうなると、総勢100人を超える関係役人で、合格ラインを決める政策が執行・決定されることになります。

なおその会議体は、"宅地建物取引業法主管者協議会"というのが正式名称のようです。

(5)合格ラインを決める政策に影響を与えるもの


合格ラインを決める政策は、さらにその上にある、国家の政策によって大きく影響されます
 ・ 国際的観点からの国家政策(例:TPP)
 ・ 国内の景気対策からの国家政策
 ・ 資格試験の質的向上を図る国家政策
など、いろいろな国家政策の影響を受けるわけです。

合格ラインを決める政策は、その意味でも、ややこしいものです。

 ・ 国際的観点からの国家政策(例:TPP)
 ・ 国内の景気対策からの国家政策
については、報道等でおなじみの経団連の不動産関連部署等が、合格ラインに口を出して来ることも十分推測できるし、役人も将来の天下りのことを考えると"経団連は民間団体なんだから黙ってろ!"と無視するわけにも行かず、結構ややこしいものになっちゃうらしいのです。